| 歯科用貴金属合金に含まれる金属元素とその特徴・役割について |
| |
| 金 (Au) 密度(比重) 19.3 融点 1060℃ |
| |
| 特徴 |
| ・豊かな黄金色を出す |
| ・他元素と合金化しやすい |
| ・耐変色性・耐蝕性の向上 |
| ・延性・加工性の向上 |
| ・銅を伴って時効硬化する |
| ・比重が大きくなる |
| |
| 白金 (Pt) 密度(比重) 21.4 融点 1773℃ |
|
| 特徴 |
| ・機械的性質の向上 |
| ・耐蝕性の向上 |
| ・合金を白色化させる |
| ・合金の融点を上げる |
| ・合金の熱膨張係数を下げる |
| |
| パラジウム (Pd) 密度(比重) 12.03 融点 1554℃ |
|
| 特徴 |
| ・白金同様の機械的性質の向上 |
| (密度が白金の約半分なのでコスト性がよい) |
| ・耐蝕性の向上 |
| ・合金を白色化させる |
| ・*溶解中に炭素などのガスを吸収しやすい |
パラジウムは溶解時に発生する炭素・水素・酸素などを吸収しやすく、特にMB用パラジウム系合金では溶解の際に金属劣化
を起こしやすく、吸収したガスを陶材焼成中に放出する可能性が高くなります。 |
| |
|
 |
| カーボンルツボでMB用パラジウム系メタルを溶解 |
左の写真の溶解したメタルの組織写真 |
| 写真:山本貴金属地金樺供 |
| |
| 銀 (Ag) 密度(比重) 10.49 融点 961℃ |
| |
| 特徴 |
|
| ・合金の融点を下げる |
| ・延展性の向上(特に金合金) |
| ・合金の熱膨張係数を上げる |
| ・ロウ着強度の向上 |
| ・鋳造性の向上 |
| ・酸化膜の色調の向上(MB用メタル) |
| ・陶材を黄変させる |
| |
| 銅 (Cu) 密度(比重) 8.96 融点 1083℃ |
| |
| 特徴 |
| ・機械的性質の向上(硬くなるが脆くならない) |
| ・金・白金・銀・パラジウムと合金化し時効硬化する |
| ・偏析の少ない合金を作る |
| ・耐蝕性が悪くなる |
| ・合金の色調を赤くする |
| ・*熱処理効果の向上 |
| |
| *銅の含有量によって軟化熱処理・硬化熱処理の効果に違いがあります |
| Au72% Cu15%の金合金の場合 |
1 2 3 |
1.アズキャスト HV265
2.軟化熱処理後 HV163
3.硬化熱処理後 HV285 |
アズキャスト時の結晶の大きさに比べ軟化熱処理後は大きく、
硬化熱処理後は小さく密に詰まっていいます
写真:山本貴金属地金樺供 |
| |
| Au77% Cu10%の金合金の場合 |
1 2 3 |
1.アズキャスト HV265
2.軟化熱処理後 HV163
3.硬化熱処理後 HV285 |
アズキャスト時の結晶の大きさと軟化熱処理後も、
硬化熱処理後もあまり変化がありません
写真:山本貴金属地金樺供 |
銅が15%含有されている金合金のほうは、アズキャスト時と軟化熱処理後と硬化熱処理後のHvの数値が大きく変化して
いるのに対して、銅が10%含有されている金合金のほうは、Hvの数値があまり変化していないことがわかります。
また、アズキャスト時の硬さも銅15%含有の金合金のが硬いです。
このことから、金属床などの熱処理の硬化を期待したいケースや硬さを必要とするケースでは、銅の含有量に注意して
メタルを選んで頂くとよいと思います。
|
|
| |
| インジウム (In) 密度(比重) 7.31 融点 156℃ |
| スズ (Sn) 密度(比重) 7.3 融点 232℃ |
| |
| 特徴 |
| ・陶材との科学的結合が強固になる(ボンディング材) |
| ・脱酸材として働き合金の流動性を向上させる |
| ・ソルダーなどに添加して融点を下げる(インジウム) |
| ・合金を強化する(スズ) |
| ・銅の変わりに添加し黄金色化させる(インジウム) |
| ・添加量を多くすると脆くなる(スズ) |
| |
| 亜鉛 (Zn) 密度(比重) 7.13 融点 419℃ |
| |
| 特徴 |
| ・*脱酸材として効果的 |
| ・合金の流動性の向上 |
| ・合金の融点を下げる |
| ・添加量が多くなると脆くなる |
| |
| *亜鉛の鋳造時の脱酸効果について |
純金をカラットメタルで割った18K合金で鋳造した物 写真:山本貴金属地金樺供
|
 |
純金を割って作った18Kの成分
金
銀
銅
3元素のみ
|
ところどころに黒い部分があるのがわかります。また結晶と結晶の境目が黒くなっています。
鋳造時に取り込んでしまった酸化物です。
|
| |
メーカーの製品の18K合金で鋳造した物
|
 |
製品の18Kの成分
金
白金
銀
銅
亜鉛
イリジウム
|
| 製品の18Kは純金をカラットメタルで割った18Kに比べ、黒い部分もなく、結晶と結晶の隙間もそれほど黒くありません |
| |
| イリジウム (Ir) 密度(比重) 22.4 融点 2457℃ |
| ルテニウム (Ru) 密度(比重) 12.41 融点 2500℃ |
| |
| 特徴 |
|
| ・*微量の添加で合金の結晶が微細化する |
| |
| *イリジウム・ルテニウムの微細化効果について |
純金をカラットメタルで割った20K合金で鋳造した物 写真:山本貴金属地金樺供
|
 |
純金を割って作った20Kの成分
金
銀
銅
|
| メーカーの製品の20K合金で鋳造した物 |
 |
製品の20Kの成分
金
白金
銀
銅
亜鉛
イリジウム
|
2つの写真をでもわかるように、純金を割った20Kは結晶の一つ一つが大きいのに対して、イリジウム含有の製品の20K
は結晶の一つ一つが小さく密に詰まっています。
このことから純金を割ってつくる20Kより製品の20Kのほうが、硬く・耐変色耐蝕性に優れているといえます。 |
|
| |
| ガリウム (Ga) 密度(比重) 5.91 融点 29.8℃ |
| |
| 特徴 |
| ・パラジウム系MB合金の融点を下げる |
| ・機械的性質の低下 |
| ・酸化膜が不安定(MB合金) |
| |
| |
| |
| |
| |
| |